討論・議会報告

第7号議案「令和7年度中野区一般会計予算」に対し賛成討論を行いました。

中野区議会令和7年第1回定例会にて「中野区議会 立憲・国民・ネット・無所属議員団」を代表して、いのつめ正太議員が第7号議案「令和7年度中野区一般会計予算」についての賛成討論を行いました。

立国ネ無、自民、公明、都ファ、無所属(小宮山、立石、斉藤、井関)
無所属(むとう、石坂、吉田)



賛成討論の原稿は以下の通りです。

賛成討論

令和7年度中野区一般会計の予算規模は、1,949億9,600万円、2年連続で過去最高となった前年度と比べて54億4100万円、2.7%減となりました。まずは冒頭、本予算にも大きな影響を与えている「中野駅新北口駅前エリア再整備事業」について触れておきたいと思います。

本事業は令和6年10月の認可申請取り下げ後、今日に至るまでストップを余儀なくされており、再検討が必要な状況です。本来、新庁舎整備費に割り当てるはずだった転出補償金は見込めなくなり、令和7年度に償還を予定していた特別区債は償還期間の延長によって対応することとなりました。施設の閉鎖管理費用や固定資産税など、新たな支出も発生しており、金額規模として大きなイレギュラーではありましたが、本予算においては好調な歳入もあって区民サービスの縮小や新規事業の取り止めなどには至らず、行財政への影響を最低限にとどめた点には、区の堅調な財政運営が寄与するものと考えます。

一方で、今後の進め方については、提案内容の継承性や手続きの公平性をはじめ、課題が散見されました。まもなく区としてどのように進めるのか判断をすることになりますが、このまま進めて納得する区民が果たしてどれほどいるのか、疑問が残るところです。いたずらに視野を狭め、一つの選択の解像度をあげることに力を傾けるのではなく、しっかりと眼を開いて、施工予定者の変更を含めた幅広い選択肢を持つことに力を尽くすべきと考えます。事業収支や一刻も早い完成といった観点のみならず、未来の区民に歓迎され、中野サンプラザと同じように永く愛される施設になるか、という観点をもって判断するように求めます。

歳入について、区の基幹収入である特別区税と特別区交付金は、所得や納税義務者数の増などを見込み、いずれも過去最高となりました。長く続いたデフレの出口が見えてきたと好意的にとらえることもできますが、物価高の影響で区民生活は好景気や手取り増の実感に乏しく、いまだ厳しい状況です。国の経済政策について動向を注視するとともに、区としてどのように区民を支えていくかを考えなければなりません。区長が施政方針説明で述べた「区民が豊かさを実感できる、区民生活に機軸を置いた政策」の実施に期待いたします。加えて、数年続いた歳入の伸びが鈍化する中で、好調な歳入を過信することなく、あらゆるリスクを想定した臨機応変な財政運営を求めます。

また、都区財政調整交付金の配分割合について、特別区側が55.1%から56%と大きく動きました。配分割合が増えたことは歓迎すべきことであり、ここに至るまでの特別区長会、特別区議会議長会の働きかけに敬意を表します。一方で、特別交付金の割合が増加していること、区で設置した児童相談所分には充足しないことをはじめ、課題も残っております。さらなる都区財政調整制度の見直しを都へ求め、引き続き改善に向けて取り組むよう要望いたします。

ふるさと納税による減収額は増加の一途をたどり、本予算では3億円増の約31億円となりました。平成27年度より拡充されたのち、国からの補填が一切ないまま10年近くを経て尚、区の財源は流出を続けております。ふるさと納税に加え、地方消費税の清算基準の見直し、法人住民税の一部国税化など不合理な税制改正等による、区への影響は到底看過できるものではなく、国へ抜本的な見直しを求め続けるよう、区の働きかけに期待します。

次に、歳出についてです。まず、予算編成方針において、「計画等に位置付けられていない新規・拡充事業を立案する場合は、既存事業の見直し等を必須とし、その経費については、既存事業の上限額を超えないように努める」と、明記されたことを評価いたします。効果検証につとめ、事業の有効性を見極めたうえで、スクラップ&ビルドの実効性をさらに高めていくよう求めます。

歳出抑制においては、経常経費の削減を原則としており、事実10年間の推移をみると、歳出に占める義務的経費の割合は減少しています。継続的な取り組みによる効果を評価する反面、特に人件費においては、業務量の増加に比べ職員定数が適切であるか懸念するところです。特に、専門知識を有する人材の不足が今後さらに深刻化すると、区政運営にとっても大きな足かせともなりかねません。各事業を進めるにあたってマンパワーが充足するよう、人材のさらなる確保に期待します。

デジタル政策に関しては、業務効率化にかかるDXの推進や生成AIの導入によって、デジタル活用を効果的に進めた点を評価します。自治体情報システムの標準化・共通化やDX推進計画の策定などを経て、今後さらにデジタル政策の選択肢は広がってまいりますが、あくまで手段の一つであることを忘れてはなりません。その先の目標・目的を的確に捉えたうえで、一層の取り組みに期待します。

これまで様々な取り組みが進められてきた不登校支援について、今後ガイドラインに沿って教育支援室の運営体制が充実されることにより、体系的に取り組みが進められていくことを評価します。

また、区が目指す環境施策を総合的に推進するための環境基本計画について、令和7年度に改定を予定しています。気候危機が深刻化する中で、ゼロカーボンシティ宣言に掲げた「2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ」実現のために、計画や方針を一歩前に進めた、より具体的な取り組みが必要です。

その他、個別の事業において、男女共同参画センターSNS相談の開設、(仮称)DX推進計画の策定に向けた意識調査、デジタル地域通貨事業の拡充、常設プレーパークの開設、妊娠・出産・子育てトータルケア事業の充実、障害の理解促進・ふれあい交流事業、歩きたくなるまちづくりの推進、西武新宿線(中井駅~野方駅間)連続立体交差事業に伴う鉄道上部空間活用などは、これまで会派として要望してきたものであり、区の姿勢を評価するものです。

続けて、財政運営の考え方についてです。先に述べた新たな支出に備える関係で、財政調整基金の年度間調整分が上振れたものの、その他の各種基金については、財政運営の考え方に概ね沿って積み立てることができています。他方、学校をはじめ区有施設整備を控え、物価高騰などにより工事費が上昇する中で、基金に減価償却費25%相当分を積むことは果たして充足するのかなど、社会情勢に応じて改善すべき点も見受けられました。財政運営の考え方自体についても、不断の見直しが必要であると考えます。

さらに、令和7年度には、今後の財政運営にも大きく影響する次期基本計画、区有施設整備計画の検討を控えております。着手するにあたって、財政運営の考え方や財政フレームとの整合性に留意したうえで、精緻な積算に基づいた実現可用性のある計画となるよう求めます。

最後に、本予算には修正案が提出されておりますので、会派としての見解を申し上げます。本修正案は「中野駅新北口駅前地区市街地再開発事業の評価」を減額修正するものです。今回の判断が区へ大きな影響を及ぼすものであり、第三者による評価を受けることは一定の意義がある点。また、当初予算への計上が予算編成として通常の方法である点。以上、2点を鑑みると、ことさら当該事業だけを取り上げて減額する必要性は薄いと考えます。

現在の日本経済は、賃金上昇率が過去最高を記録する一方、それを超える物価高によって、実質的な賃金は下がり続けております。今まさに、厳しい状況におかれている全ての区民を下支えする力強い支援が必要です。実感なき賃上げが影を落としている区民生活を、上向きの経済実感という光で照らすような、未来を拓く区政運営を求めまして、賛成討論とさせていただきます。

引き続き、皆さんの声もお寄せください。