討論・議会報告

令和4年度「中野区一般会計予算」の議案に対し賛成討論を行いました。

中野区議会・第1回定例会にて「中野区議会 立憲民主党・無所属議員団」を代表して、斉藤ゆり議員が令和4年度「中野区一般会計予算」の議案への賛成討論を行いました。

立憲民主党、公明党、共産党、都民ファースト内野議員、近藤議員、石坂議員、小宮山議員、立石議員

自民党、都民ファースト渡辺議員、むとう議員、いながき議員、吉田議員、竹村議員

賛成討論

賛成討論の原稿はこちらです:

令和 4 年度当初予算<賛成討論>

令和 4 年 3 月 10 日
立憲民主党・無所属議員団

1.総 論

第 7 号議案「令和 4 年度中野区一般会計予算」について、立憲民主党・無所属議員団を代表し、賛成の立場から討論を行います。

冒頭、今回のロシアによるウクライナ侵略に対し、あらためて強く抗議いたします。このような暴挙により、世界の平和が脅かされることに強い憤りを覚えます。日本政府には、在留邦人の保護、退避に万全を尽くし、G7 をはじめ国際社会と一致結束して更なる経済制裁などの厳しい追加措置を求めるものです。

令和 4 年度の中野区一般会計予算は、1,579 億3,500 万円、前年度に比べ 106 億 9,400 万円、7.3%の増となりました。本議案に賛成する主たる理由として、本予算がコロナとの闘いに打ち勝つためのコロナ対策と区民の活動を力強く再開するための様々な支援策、さらには、昨年新たに策定された新しい中野区の将来像を描いた中野区基本構想と基本計画を実現するための予算であり、コロナ禍において「区民の命と生活」を守るために必要不可欠な予算であるからです。

以下、本議案への賛成理由の他、予算を執行するに当たり、我が会派として指摘すべき点、要望などについて縷々申し上げます。

2.歳 入

まず、歳入について。令和 4 年度の歳入一般財源は、令和 3 年度比で 91 億円増の 803 億円と過去最高となりました。一方、令和 3 年度当初予算での歳入一般財源は、新型コロナウイルス感染症の影響により、前年度比 72 億円減の 712 億円、リーマンショック後の平成 22 年度予算を超える大幅な減収を見込んでおりましたが、結果として決算見込みで 806 億円、当初の想定より 94 億円の上振れとなりました。

コロナ禍という不確実性の多い時代であるが故の「想定外の上振れ」であると一定理解いたしますが、逆に、そうした時代であるからこそ、「想定外の下振れ」リスクにも十分な備えが必要です。先行き不透明さが増すウクライナ情勢とその影響による原油価格高騰と物価上昇、さらには景気停滞と物価上昇が併存するスタグフレーションの懸念も現実味を帯びてきております。加えて、法人住民税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税制度の拡大といった不合理な税制改正等により、区の貴重な財源が奪われ続けている現状もあります。本予算の歳入については、令和 3 年度の想定外の歳入増の要因を十分に分析した上で、様々な状況を想定した弾力的な対応を求めます。

3.歳 出

[コロナ対策]
次に歳出について。本予算の歳出では、新型コロナウイルス感染症対策として 10 億円余、予備費も今年度に引き続き 5 億円が計上されております。コロナとの闘いが始まり 2 年が経ちましたが、この間、中野区も幾多の「想定外」の事態に見舞われてきました。しかし、「想定外」を想定し、最悪の事態も含めたあらゆる事態に備えるのが危機管理の要諦というものです。保健所体制、ワクチン接種体制、医療体制、検査体制など、これらについては、あらゆる事態を想定した上で、補正予算、予備費を適宜適切に執行し、迅速かつ機動的に対応することを求めます。

この他、コロナ対策費の中には、コロナ禍で失われた子どもの体験を取り戻すための体験活動の拡充や、町会・自治会・友愛クラブをはじめとする地域活動の再開・活性化支援、子どもの居場所づくりと読書活動の推進といった事業も盛り込まれております。コロナ禍の長期化により区民生活に様々な影響が及ぶ中、区民の活動を力強く再開するためのこれらの取組を評価するとともに、今後のさらなる拡充を期待するところです。

[重点プロジェクト・会派要望]
また、本予算の歳出では、昨年策定された中野区基本計画のうち区が重点的に取り組む「子育て先進区の実現」「地域包括ケア体制の実現」「活力ある持続可能なまちの実現」の 3 つの重点プロジェクトに取り組む予算が計上されております。

この中で、(仮称)中野区子どもの権利に関する条例の推進、子どもの貧困対策の推進、児童相談所の設置及び子ども・若者支援センター等運営、一時預かり事業の拡充、養育費の取り決めに係る費用補助、子ども子育てに関する講演会の実施、は、区長が一丁目一番地として掲げる「子育て先進区」実現に向けて、これまで我が会派として実施を強く求めてきた事業であり、区の姿勢を評価いたします。他方、現在、国は「子ども家庭庁」の創設に向けた取組を進めております。こうした国や都の動向を注視しながら、今後は子ども政策推進のための予算・人員体制等のさらなる拡充と実効性のある施策を展開していくことを求めます。

また、「地域包括ケア体制の実現」に向けては、重層的支援体制を整備し、相談支援の強化や参加支援、地域づくり支援を行っていくとし、新たに、ひきこもり支援事業が盛り込まれたほか、認知症地域支援推進事業が盛り込まれました。2025 年を入り口として、我が国の高齢者ケアを取り巻く環境がより厳しくなる中で、中野区としても地域包括ケア体制の構築を着実に進め、区長が施政方針説明で述べられておられた「中野が都市部における地域包括ケアの一つのモデル」となることを期待いたします。

脱炭素社会の実現に向けては、新たに高断熱窓・ドア助成やゼロカーボンシティ宣言に基づくゼロカーボンシティなかのシンポジウムの開催が盛り込まれました。区民の行動変容なくして気候変動を止めることは不可能です。これらの区の取組を評価するとともにより区民を巻き込んでいく施策の実施を期待します。

その他、個別の事業では、(仮称)公契約条例の推進、人権及び多様性を尊重するまちづくり推進条例の推進、多文化共生推進に係る基本方針の策定、DX 推進に係る事業、中野区ホームページのリニューアル、プレーパーク活動団体等支援、四季の森公園利用者アンケートの実施、は、これまで我が会派として要望してきたものであり、区の姿勢を評価するものです。

[中野駅周辺まちづくり]
次に、中野駅周辺まちづくりについて。本予算には区有地等利活用事業として中野区立商工会館跡地活用に係る経費が計上されております。商工会館跡地は、50 年~70 年の定期借地を設定し、PPP を用いた手法で民間整備を誘導し、施設の一部は、産業振興センターの経営支援機能及び経済団体事務所を移転することとしています。民間活力活用を否定するものではありませんが、この間の当該事業の区の進め方を見るに、拙速感が否めません。事業を進めるにあたっては、地域住民をはじめとする区民、そして議会への一層の説明責任を果たすとともに、事業者選定、契約締結の過程においては公平性と透明性をしっかりと確保した上で進められることを求めます。

また、中野駅新北口駅前エリア再整備事業において、現在、事業者よりプロポーザル時の容積率900%から 1000%へ増やす提案がなされております。しかし、事業者主体ではなく区としてのビジョンを持ってこの容積率についても判断しなければなりません。重ねて、これからの都市計画決定の手続きの過程においても、建設分科会において指摘した権利床の活用における議会の議決の時期や、平成 20 年に議決をした「サンプラザ地区に係るまちづくりの整備の方針」と現事業計画との矛盾点の解消を求めます。

今後、中野駅周辺では、まさに 100 年に 1 度のまちづくりが進んでいきます。新たな「中野の顔」となるこれらのまちづくりは、遅滞なく着実に進められることを求めますが、「誰のための」「何のためのまちづくり」なのか、その原点を忘れてはなりません。まちづくりの主役は区民です。区長におかれましては、区長公約で掲げられた「区民が必要とする開発への転換」この初心を今後も忘れることなく、区民の福祉向上に資する、区民が主役のまちづくりとなることを求めます。

4.財政運営の考え方

次に、今後の財政運営の考え方について。令和 2 年 9 月の行政報告において、区長は「財政的な非常事態と言わざるを得ない」との認識をお示しされました。一方で、冒頭申し上げたように、令和3 年度の歳入一般財源は、大幅な上振れとなり、令和 4 年度も過去最高となりました。

財政当局が財政状況を決して楽観視することなく、先行きを厳しく見ることは理解いたしますし、必要なことですが、「区の財政の現状認識」と「実際の財政状況」のここまでの乖離は、さすがに現実離れし過ぎていると言わざるを得ません。

コロナ禍において様々な分野で行政ニーズが増加しているにもかかわらず、むしろ財政状況が厳しいという 「薬」が効きすぎて、政策経費の執行が縮小し、政策の想像力が低下してしまうという「副作用」も憂えるべきです。財政の現状認識については、これらを十分受け止めて頂き、財政非常事態という認識が本当に正しいのか、あらためて再考を求めます。

また、本予算においては、基本計画にて定めた 687億円を基準となる一般財源規模とし、これを歳出の基準としております。一方、本予算の歳入一般財源は、803 億円となり、116 億円の超過となりました。また、歳出における一般財源充当事業費は 761 億円で、74 億円の超過となっており、財源不足分は基金からの繰り入れを行っております。こうした、基準となる一般財源規模と実際の歳入一般財源・一般財源充当事業費との乖離は、今や常態化しており、もはや形骸化していると言わざるを得ません。「入るを量りて、出ずるを為す」という財政運営の本筋を実現するための、基準となる一般財源規模の考え方に代わる、新たな財政運営の考え方を速やかに示されることを、あらためて求めます。

5.区長ならびに日々奮闘されている区職員の皆様へ

最後に。区長は、施政方針説明の結びにおいて「細き流れも大河となる」と述べられました。区長が掲げる「子育て先進区」「対話の区政」「ボトムアップの区政」、これらの「区政改革」は一朝一夕に実現出来るものではありません。まさに「堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく」ような、粘り強い取組が必要になります。この 4 年間、様々な区政課題に取り組まれる中で、前区政の問題点をあらためて認識する一方で、前区政が遺したレガシーを実感する場面もあったことと推察します。しかし、ゆく河の流れは絶えずして、もとの水にあらず。時々刻々の変化の中で 33万区民のトップとして「何を変え」「何を変えない」のか、コロナ禍という不確実な時代にあって、今ほど区長の強いリーダーシップが求められる時はありません。

奇しくも区政施行 90 周年という節目の年にあたり、現状に甘んずることなく、さらなる可能性を追い求め、より良い中野区の未来へと邁進する区長ならびに区職員の皆様の、なお一層の奮起を期待して止みません。

以上、中野区政の更なる飛躍と発展を切に願い、本議案への賛成の討論といたします。

ご清聴ありがとうございました。

参考:令和4年度「中野区一般会計予算」資料

令和4年度当初予算説明書

令和4年度当初予算(案)の概要

中野区公式ホームページより