討論・議会報告

第18号議案「財産の処分について」に対し、賛成討論を行いました

中野区議会令和6年第1回定例会にて「中野区議会 立憲・国民・ネット・無所属議員団」を代表して、森たかゆき議員が第18号議案「財産の処分について」に対し、賛成討論を行いました。

本議案は、区役所現庁舎の土地建物の一部について、土地再開発法第71条の権利変換を希望しない旨の申し出等を行い、補償金等を得るものです。

これは中野駅新北口駅前エリア再整備事業の一環として必要となるもので、我が会派としては当該事業計画全体を進めるべきか否かが問われる議案であると認識し、この間の議論に臨んできました。

今回の議決で一つの区切りとなります。

立国ネ無、自民、公明、共産、都民ファースト、無所属(石坂、立石、斉藤けいた(維新))

無所属(むとう、小宮山、吉田、井関(れいわ))

賛成討論の原稿は以下のとおりです。

賛成討論

ただいま上程されました第18号議案財産の処分について、立憲国民ネット無所属議員団の立場から賛成の討論を行います。

本議案は、区役所現庁舎の土地建物の一部について、土地再開発法第71条の権利変換を希望しない旨の申し出等を行い、補償金等を得るものです。これは中野駅新北口駅前エリア再整備事業の一環として必要となるもので、我が会派としては当該事業計画全体を進めるべきか否かが問われる議案であると認識し、この間の議論に臨んできました。

中野駅新北口駅前エリア再整備事業は、現在中野駅周辺各地域で進んでいる100年に一度とも言われるまちづくりの中でも最大規模で、その中核をなすものです。

区がHPに掲載している「中野駅新北口駅前エリア(区役所・サンプラザ地区)再整備について」の「これまでの検討の経過」は平成20年10月「サンプラザ地区に係るまちづくり整備の方針が区議会で議決」から始まっています。

そこから数えても15年、平成14年に雇用・能力開発機構から中野サンプラザ譲渡の打診があった時点を議論の出発点と考えると実に20年以上の議論があったことになります。

その長年の議論の積み重ねが今日の議決で一つの区切りを迎えます。本来であれば区民が待望するまちづくりの進展の節目として希望に満ちた討論を行いたいところですが、現状を考えるとこれまでの反省点や今後の懸念点を指摘せざるを得ません。

区が選定した本事業を推進するための第一種市街地再開発事業の施行予定者の代表事業者である野村不動産は、平成27年3月から事業構築パートナー、事業協力者として区の検討に無償でご協力をいただいていた事業者です。施工予定者の選定は公平公正な判断の結果と信じるほかありませんが、そう受け止められない区民も多くいます。民間企業に無償で協力を求めれば、その分の見返りを期待されると考えるのは当然のことです。前区政の時期の話ではありますが、区民の不信を招いたこうしたやり方は大きな反省点です。

施行予定者選定時の提案については、審査委員会から建物壁面の圧迫感と資金計画の確実性に課題があると指摘されました。その後、容積率の活用の上限が900%から1000%に変更することとなり、高さによる圧迫感がより増すことが懸念されます。

資金計画についても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とそれを契機とした生活様式の変化、円安の進行や国際的な政情不安も含めた様々な要素による物価高騰等による環境の変化の影響を受け、事業収支を合わせることを優先せざるを得なくなり、アトリウムやデッキといった部分のグレードが見直されました。また、これもコスト面の課題から昨年末時点では地下に予定されていた自転車駐車場が商業フロアの2階部分に入ることとなりました。

審査委員会が指摘した二点の懸念点いずれに対しても十分な対応策が示されたとは言えません。

事業収支を合わせることを優先せざるを得なくなった影響は、本議案により直接関係する資産の持ち方に更に顕著に表れています。

我が会派としては、床を取得して運用することには市場環境の変化によるリスクが付き物であることから、区が権利変換により得る資産は土地のみで所有すべきと主張してきました。区も令和2年1月策定の中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画の時点では「土地のみでの所有も視野に入れ検討」していくとしていましたが、市場環境の変化によりそれを実現することが困難となり、再開発ビルに権利床を所有することとなりました。現時点の想定では権利床の運用によって年間約7億円の収支のプラスが見込まれるとのことですが、その95%を占める事務所床のニーズが20年30年先にどうなっているのか、懸念が残ります。

また、当初は当然に民間が所有、運営することが想定されていた展望フロアやバンケットについても区が床を取得するとされています。これらの床は事務所床以上に利益を生むことが難しく区が床を取得しなければ再開発ビルの中でこれらの機能を実現できないとのことですが、

元々は事業者の提案の中にあったものですし、提案の中では「確実に事業を実現」する旨も謳われていました。事業者の提案内容の継承という点で問題があります。

区としても、中野駅新北口駅前エリア再開発権利床は「民間事業者への貸付など行政サービスの財源確保を目的とした資産の有効活用を図ります」とした令和3年10月策定の区有施設整備計画の考え方に反することになります。これも市場環境の変化によりそうせざるを得なくなったとのことですが、床を持っていただくことは難しいにしても、バンケットの内装や展望フロアにつながるエレベーターにかかる経費の負担など、提案内容の継承の観点から、事業者には財政面や運営面含め積極的に関わって頂くべきと考えます。

これらの権利床のあり方は区財政へも大きく影響するものです。議決の後も、区としての検討状況や事業者との協議状況などを随時議会に対して示していくべきと考えます。

特に、今後の予定の中でも本年第3回定例会頃が想定されている権利変換計画への同意は大きな判断となります。

現在示されている権利床の想定収支も、昨年末に示された想定から比べて事務所床の面積が1.1万平米から1万平米に減少、金額にして約9000万円の減収となっています。想定収支の更なる悪化も懸念される中、状況によっては区長による権利変換計画への不同意もありうることを総務委員会で確認をさせていただきましたが、いずれにしても状況の変化があれば速やかに議会に報告し、意見を聴取すべきです。

近年は議論の争点となっていませんでしたが、大規模集客施設の規模についても大きな議論がありました。

10000人規模のアリーナの構想は、酒井区長就任後の様々な議論を経て着席5000人、最大7000人規模のホールとして整備することとされました。個人的にはもう少し小規模でも良いのではと今でも思っていますが、この規模についても民間の提案によるものであり長期に渡って安定した運営がなされることを期待をするところです。

これまで指摘した問題点と同じような構図で、将来この大規模集客施設についても、駅前の一等地の集客施設が成り立たなくなってしまっては街全体の活力に影響がある、といったような理屈で公費を投入し維持をしていくようなことが万が一にも起きないように、各主体が責任を持って取り組むべきです。

ゼロカーボンシティ宣言をしている中野区のシンボル的なビルとして相応しい環境負荷軽減が実現されるかについても不安があります。

今年一月に示された資料によると、住宅はZEH-M Oriented、その他はZEB Orientedを環境性能の目標として掲げ、多様な取組の「イメージ」も記載されていますが、まずは具体的な実現の道筋を明らかにするよう求めます。また、高層ビルの中にもOrientedより上位のReady認証を取る例も出てきており、更なる高い目標を見据えた取組にも期待したいところです。

このように、中野駅新北口駅前エリア再整備事業については、我が会派として問題があると考える過去の経緯や今後の事業展開への懸念などがありますが、それでも本事業は遅滞なく進める必要があると考えます。

仮に事業の進展が遅れることとなれば、新庁舎整備に関わる区債の利払いや現庁舎の閉鎖管理にかかる費用などを支出せざるを得なくなります。これらの支出は利益や価値を生むことのない「ただ出ていくだけの金」であり、そうした支出が生じる事態は避けるべきです。

例えば施行予定者の選定や再整備事業計画の見直しなどから事業を組み立て直し、より良い事業構築が可能であるならばその支出にも意味が出るのかもしれません。しかし、現在の市場状況を考えると現時点よりも良い再開発プランの提案が出てくることを期待することには無理があります。そうであれば、たとえ全てを達成することが困難であるとしても、事業者選定時の夢のある提案の実現を目標として掲げ続け、区と事業者が協力し力を尽くすべきと考えます。

また、当事業の進捗が遅れると、中野駅西側南北通路・橋上駅舎等事業の整備にも遅れが生じ、デッキの整備など歩行者動線の改善も後ろ倒しとなります。

さらに、本事業の前提となっている中野サンプラザの取得に区が要した費用は、平成16年のまちづくり中野21に対する出資2億円、平成20年の事業再編に必要となった11億700万円余、合計約14億円であり、本事業により区は多額の利益を得ることになるという見方もでき、その一部を区民にサービスとして還元することも一定理解できるところです。

以上のことから本議案には賛成するとことではありますが、中野駅新北口駅前エリア再整備事業の進展に際しては本討論や関連委員会で指摘した懸念事項や要望について十分に対応していただくことを重ねて求めて、討論といたします。

以上

引き続き、皆さんの声もお寄せください。